10年前の私と作品

先日の催事で思いがけなく昔の作品に遭遇する。ラブラドライトのペンダント。ずっと気に入って身につけて頂いたそう。

コードの色を変えて欲しいというリペアのリクエスト。リペアまでしていただけるなんて、作り手冥利に尽きる。

ふと、この作品を作っていた時空にタイムスリップする。

それは今から約10年前インドの「風が吹き抜ける村」。インド、ネパールでの石の仕入れが終わり、「少し静かなところでじっくり作品制作がしたい」とたどり着いた小さな村。

ドブ川のようなガンジス河でなく、透き通った水のガンジス河の辺り。毎朝早朝に起き、窓を開けると心地よい風が吹き抜ける。大理石の床を雑巾掛けし、瞑想し、ヨガをし、そして制作に没頭する日々。集中直が途切れたら周辺の山道を歩き、創造の泉からアイディアが湧いてくるのをひたすら待つ。お腹が空いたら近くのアユルベーダーレストランでご飯を食べる。もう、本当に理想的な生活だった。

理想的な生活であったけれど、その当時それなり悩みを抱えていた。行き詰まった人間関係、これからの人生のこと。帰国後対処しなければならないさまざまな事柄。

「日本を離れても日本での心配事は、どこまでも私についてくる』

そう、物理的距離では決して解決できないこと。その心配ごとは日本に置いてくることはできない。私の心の中にあるのだから。

当時の私は、色付きレンズの眼鏡を掛けていた。特に深い意味はない(と、その当時は思っていた)ある日この村で知り合ったとある旅人に「その眼鏡、やめた方がいい。瞳を隠している。人と話すときは、お互いの目を見て話さないと」と言われる。

その瞬間、ポロポロ涙が溢れてきた。私はある時期から、人とのあいだに壁を作り、物理的にも精神的に引きこもっていた。(引きこもった仕事をしたいからネットショップも始めた)人を避けたくて自分の目を見せないようにサングラスばりの眼鏡をかけていたことに気づいた。全くもって健全ではない。が、当時はそれが壁の向こうから自分を守るひとつの手段だった。その原因は些細な執着を長い年月手放せないでもがいていことにあるんだけど、不思議なことに、ポロポロ涙が落ちるたびにその執着も落ちて行った。

そんな風の吹き抜ける村で制作したラブラドライト。心乱されない環境に辿り着き、指先をひたすら動かしていた日々。

日本の私の居場所で10年前と同じように指先を動かす。日本にいるんだけど、私は10年前と同じ風の吹き抜ける村にいる。あの太陽と身体に触れる風を感じ、ガンジス河が流れる音と、木々がささやく声を聴き、指先を動かす。そんな日々の中、一本のメール。10年前のあの村で「その眼鏡はやめろ」と私に言った旅友達からだった。

「次の時代が始まる」と、つぶやく。

大きく昔を振り返る時、次のステージ、もしくは次の時代に突入するサインであること、経験上知っている。それをこのラブラドライトが教えてくれた。

美しきガンガー・マー

そういえば今、ナヴラトリーが始まっているのだな。女神降臨中。

10年間大事にこのラブラドライトを身につけてくれたI様、本当にありがとう。

投稿者:

tigressyogi

1969年冬・東京に生まれる 世界放浪中にクリスタルの美しさに心を奪われ クリスタルショップ Tigress Yogi を立ち上げる 筋金入りの偏頭痛持ちだか、日本を離れるとなぜか頭痛は消える 米国クリスタルアカデミーIntermediateコース終了 出没地:インド、ネパールその他山岳地帯

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