レシピの話。

今まで、作品のレシピというものを持っていなく、作ったこともなかった。フリーハンドで思いのまま編み込む。「なんとなく」完成図は頭の中にあるんだけれど、あくまでも「なんとなく」の、全体のフォルムのみを決めて編み始める。

最近「同じデザインのものを」とリクエストされることが増え、そして今、ピアスを作っている最中。ピアスというのは当たり前だけどペアなもの。1個作って完成!というわけにいかず、複雑なコードの編み方だと「ペアを完成させるため」どうしてもレシピを作っておかなければ、、、ということになった。要するに、一個仕上げると編み方を忘れてしまうからなんだけど。

編む → 次の行程に入る前にメモを取る → 編む → 次の行程に、、、、

全くもって時間のかかる作業。不具合が出てくると、解いて作り直す。ノートも消して書き直す。写真のピアス、レシピを作るだけで3日もかかってしまった。私にしか解読できないレシピだけど。

マクラメを編んだことのない人には全くどのような作りになっているのか?全くわからないと思う。(作ったことのある人なら大変さ、わかるよね)このピアスは最初は2本のコードから始まって、コードを足して、足して、合計で10本のコードが必要となる。この10本のコードを向きを変え、編み方を変え、合体させ一つの作品が出来上がる。

一つのレシピが完成すると、それに沿って、大体10個くらいの試作を作ることにしている。全体のバランスはもちろん、一つ一つのパーツ部分を確認して納得ができるものに仕上げるため。そして一番大事なのが、強度。コードが解けないか、変形しないか?要するに壊れやすくないか?をチェックする。すぐに壊れてしまうものなんて、誰も欲しくない。どんなに美しく作り上げたとしても。形が変形しやすい箇所を見つけると、レシピを改良しながら強度を上げていく。1個に掛かる時間は、このピアスの場合だと1時間ほど。マクラメは編んでおしまいではなく、焼き止めという作品を完成させる作業が必要。ウニョウニョと伸びた10本のコードの処置。私は新しい作品を作り始めるとき、まず最初に「最後の焼き止め(コードの処理)が可能な作品か?」を考えてから始める。焼き止めができて、初めて作品となる。これがうまくできないとただの「編み方のサンプルその1」になってしまうから。

今年に入ってから、このレシピ作りを続けている。「いつか、やならきゃなぁ」とずっと思っていて手をつけていなかった作業だ。

「いつか、やらなきゃ」は、どうしても「なかったことにしよう」になりがちな私。この悪習慣を変えるためにーーーーー生活全般もそうなんだけどーーーーー「なかったことにしょうリスト」を作り上げ(膨大なのよ!)それを一つ一つクリアしていく作業が去年の春から続いています。なんのために?と言われるとわからないのだけど。多分、これからの生き方、人生のため。些細な「なかったことにしよう」も無意識から意識に持ってきてひたすらコツコツとクリアしている最中です。