チベット医学をご存知でしょうか?
インドのアユルヴェーダと中医学の影響を受けたと言われているチベット医学
これを説明し出すときりがない、、、
というより知識不足のため説明ができないだけなのですが
知識よりも体験、ということで、私が経験したチベット医学をご紹介します。
カトマンドゥで風邪をこじらせた。
ネパールの前に滞在していたインドで「少し風邪気味かな?」と思っていたが、
ネパールに到着して寒さと排気ガスによる空気の悪さで更に悪化した。
発熱はしていなかったが、とにかく咳がひどい。
咳のしすぎで腹筋背筋が筋肉痛だ。
ここ3日間、咳のせいでまともに寝ていない。
気管支の弱い私は慢性気管支炎になってしまうことを恐れていた。
インド製の咳止めシロップを飲んでみたがちっとも咳は止まらない。
いつも旅に出る時には日本製の薬を持っていくのだが
今回だけはなぜかそれを怠った。
弱ったな、じきに肺が破れるのではないか?
そこでネパール在住の知り合いにチベット医学の病院(というか診療所)を紹介してもらった。
チベット人医師の自宅(多分)にある小さな診療所だった。
午後一番の受診だったがチベット人の患者さんが数人受診待ちをしていた。
まずは問診。
症状は?食欲はあるか?下痢はしていなか?などなど一般的な問診のあとに脈をとる。
じーと、集中してひたすら脈を取る。
ふんふん、とうなずいた後、処方箋を書き始めるドクター。
「4日分の薬を出します。4日経っても良くならなければ、また来て下さい」とのこと。
正味5分もなかったと思う。
別棟の医局で処方箋を渡し、薬を貰う。
確か300ルピー(500円弱)支払ったような気がする。
薬代のみで診察料は無料。無料というか、診察代はドネーション(心づけ)ということで
ドネーション・ボックスが置いてある。
どの位心づけをすればいいのかわからず、とりあえず100ルピーほど箱に入れる。
「学生、チベットから着たばかりの方(難民という意味だろう)は無料です」と言う意味のことが書かれている。
勿論、この学生と言うのは外国人学生旅行者のことではない(多分)
現地の学生っていう意味のことだ。
この無料というのは診察代が無料なのか、薬代も無料なのかちょっとよくわからなかった。
(なにか書いてあったが、こっちも体調が悪いので英語を読むのが面倒だった。)
まぁそれにしても、気持ちの良いポリシーだ。
渡された薬は朝昼晩の一日三回服用。
大小様々なウサギのうんこのような丸球。色からしてもうんこだ。
それぞれ微妙に色も違うし、匂いも違う。
草原の香り、、、と表現すれば格好がつくが、ようは草の匂いである。
玉が大きすぎて飲み込めないようなら、砕いて白湯で溶かして飲んでくださいと言われた。
もちろん、こんな大きい玉は飲み込めない。
白湯に溶かしてまずは一回分を服用するが、
とにかくまずい!苦い!青汁以上である。
本当にウサギのうんこだったらどうしよう、もしかした牛かなぁ、と不安が過ぎる。
これを一日三回、4日間も飲み続けると思うと憂鬱だ。
まぁ、効かなかったら今度はちゃんとホスピタルに行けばいいのだし、、、、
さて効果はどうだったか?
これがバッチリ効いたのである。
昼、夜と服用し、床に就いたが、咳がぴったりと止んだ。
その代わり一気に熱がでた。
多分、38度は超えていたと思う。
平熱の低い私は38度を超えると思考能力が止まる。パーになるのである。
「ウサギのうんこってのも役に立つものだなぁ、日本でも試してみよう」と
イカれた頭にはそんなことしか浮かばない。
全身汗だくである。風邪を引いてしまうから着替えよう、(既に風邪は引いているのだか)と、
ズボンを頭から被ろうとする私。なにやっているのだ?
熱にも苦しい熱と心地良い熱がある。
後者の熱というのは「浄化のための熱」(だと自分では思っている)
毒素が体から放出される感覚が伴う発熱。まさに今、その発熱の中にいる。
「ウサギっていうのもは、、、、、すごいなぁ」イカれた頭でウサギに感謝しつつ
ベッドに沈むように、どこまでも深い井戸に落ちていくような感覚の中、深い眠りにつく。
しばらくしてドアのノックの音で目が覚める。
ホテルの従業員がスープを持って立っている。
心配したホテルのオーナーが部屋に届けるように指示したらしい。
真夜中に申し訳ないと思いつつありがたくスープを頂く。
いや、違う。真夜中の2時ではない。今は午後の2時だ。
昨晩は9時に寝た。私は17時間も寝ていたことになる。
既に熱はない。ちょっとフラフラするが体が軽くなっているし咳も出ない。
すごいぞウサギ、ではなくてチベット医学。
その後、めきめきと回復していく。
3日目には「もう苦い薬は飲みたくない」という余裕が出てきた。
アユルヴェーダ、漢方などは即効性はない、と聞く。
しかし、西洋医学の薬を服用してもこんな即効性は期待できない。
たまたま偶然その晩に浄化の熱が始まったのか?
その後もチベット医学にお世話になる機会がないので比較することもできないが、
少なくとも浄化の熱を誘発する作用があったと思う
ウサギのうんこ呼ばわりして申し訳なかったな、と反省。
しかし今でもウサギを見ると「あの時はありがとう」と無意識に感謝してしまう自分いる。